珍しいことだ、突然だった
リーダーがこの出来事の発起人なのだから。
「EN〜宴〜」
ある日、
「ちょっとだけ、みんなで出かけてみないか?」
みんなの目が驚きで見開かれたことは言うまでもないことだ。
「今、なんてったのリーダー。」
セキレイが、みんなの心を代弁して、たずね返した。
「だから、出かけないかっていったんだ。」
「どうかしたんですか、ここから、でるんですか?」
「イサラ、君まで」
リーダーはすこし、うつむいて頭を抱えた
「小説が行き詰ってんじゃねーの。いつものことじゃねーかよ」
「誰が、何時、何に、行き詰った」
「だから、ナニに・・・・」
もちろん硬い本の角が宮原の頭を直撃したことは言うまでもないだろう。
「お前は、飯作ってこい!!命令な!」
「なんで、だよ!!」
「うおぉ、飯付き!!」
やったね、と。ひとりで、小躍りし始めたセキレイ。
「まるで、ピクニックですね。」
ササライも、うれしそうに微笑んでいる。
リーダーは照れくさそうに言った。
「まぁ、そんなところだ。」
と。
「ねぇ・・・まだ・・・オレ、腹へった。」
「け、結構歩いてますよね。」
「おい、こんなに、外に、いいのかよ。」
「すこし、静かにあるけないのか、バレたらどうするきだ。」
もう少しだから我慢しろ。
そういって、後ろを歩く3人を黙らせた。
3人は心の中「ダメなんだこの場所」と思ったに違いない。
道は、ずっと山の中を進んでいる、代わり映えのない、常緑の樹ばかりだ。
地面もすこし、草に覆われている。ほぼ人が通ることがないのだろう、土の色がなかなかみえてはいなかった。
そんな道をどれくらい歩いたろう、確か、部屋をでてからきっと2時間はかかっている。
道が、上り坂ということもあるだろうが、それにしても長い。
それを、リーダーは、苦しい表情を一つも浮かべず、もくもくと歩いている。
セキレイは、すでに、ばてそうになっていた。
そんなときだ、目の前が急に開けた、
突然だった。
今まで空さえ見え隠れしていたというのに、今は、空が目の中に広がって、脳を捕らえてはなさい。
しかし、それだけじゃなかった。
「ここだ。」
リーダーがそういって、ひろげた腕の先に見えたのは、なんとも言葉に言い表しようのない美しいものだった。
「あっ・・・」
3人ともが、唖然として、その場に立ち尽くしている、同じセリフを響かせた。
「なんだ」
「ここに、つれてきたかったんだ、日ごろを忘れそうだろ。」
そう、それはまるで桃源郷。
目の前に広がった青のなか、淡い桃色の何かが、ひらひらと舞い踊るかと思うと、ひらひらと常緑の大地に舞い降りる。
ひらりひらり、ひらひらり、まるで、踊り子の少女のように。
そして、その木がかかえるのは、無数の華だ
千、いや、万の小花をたたえた大木だ。
「な、なんだコレ!!!うぁ、雪だ、雪」
「ちがいますって、花ですよ、花びら」
「うわ、マジでなんなんだ。」
3者3様の驚きをあらわにしていた。
「桜、ソレが名前だよ。」
と、リーダーがいった瞬間だった、セキレイが駆け出したかと思うと、おもいっきりその大木に体当たりした。すると、万の花からはなびらが、ひらひらと舞い落ちてくる、セキレイの頭上をひらひらと
「すげぇ、すげぇ〜」
「こら、お前、なにやってるんだ!!!」
「だってこうしたら、もっとみれるじゃん」
セキレイは、いたずらっ子そのもののにんまり笑顔でこちらを見る。
「お前わかってねぇーなぁー。風に舞うからいいんじゃねぇか。な」
「ですよね。」
「う〜ん、そっか。」
と、上をみあげ、淡いサクラを眺めたかとおもうと、突然、宮原に向かって指差し
それより飯!!
とさけんだ
「まったく、花より団子だな。わかった、みんな飯にしよう!!」
そう、それは、花見という行事、古代からあるこの文化、いま衰退し、桜を残す土地はもう、殆ど皆無といっていい。
この花の下ではないと、花見とは言いがたいだろう。
「よし、まかせとけ、このオレ様が作った”サクラスペシャル”食いやがれ!!」
「リーダー、ミヤハラさん今名前つけましたよね、」
「だろうな、桜なんてしらなかったはずだしな、あ、お前こら、誰がワインなんか」
「やっぱ、上手い飯には、うまい酒だろ〜」
「だよなぁ!!」
いま、宴が始まる。
日ごろの感謝を、みんなに。
伝えるのは、照れくさいから・・・・。
さぁ、おおいにさわげ。
そして、楽しもう、この美しい桜の舞いの元。
〜Fin〜
story:yu-ka (thanks!)
illust:te26
この作品はyu-kaさんが書いてくださったお話にイノウエがイラストを添えたものです
yu-kaさんありがとうございました!